眠れない我が身を持て余した苦しい夜を越え、自分の眠りを「こんなもんでいい」と思えるようになってさらに今日に至るまで、我ながらいろいろなことを試したものだと思う。眠りの極意、などというと少し大げさだけど、私なりの眠りのコツ、あるいは不眠とのつきあい方をまとめてみた。ひとの眠りは十人十色だから、あくまで参考程度にどうぞ。
●寝る前、あるいは眠れないとき時計を見ない
私は布団に入る前に時刻を確認して「眠れる時間が今日は何時間あるか」と数えるのをやめている。そして、たとえ眠れなくてもいちいち時計を見ないことにした。単純なことだが、これが結構いい効果をもたらしている。これまでは眠れずに悶々としている間、時計を見ては、「1時間も経ったのに、まだ眠れない」とジリジリしながら、可能な睡眠時間を計算したものだったが、そうすると余計、焦ってくるし、また起きてからも、「昨日3、4時間しか眠れなかった」という負荷を意識しながら過ごすことになるから。
●眠れないときは寝ない、くらいの気持ちで
熟睡できるひとに「眠れなかったら寝なければいい」などと言われるとどうにも腹立たしくなるが、確かにそれもひとつの方法だ。不眠のなにが辛いかといえば「眠れないで寝返りを繰り返す時間」。ゆえに私は眠れそうにないときには布団に入らず、布団に潜りこんでも眠れなかったら寝室から出るようにしている。また、不眠が続くようなときには、昼間あえて動いて運動量を多くする(ダイエットにもなるし)。起きている時間と睡眠は表裏一体。以前の私は眠ることばかりにこだわり、起きているときの過ごし方は後回しだった。
●寝酒は「ちょっと一杯」で終わらなくなる
世界10カ国で行われたある睡眠調査によると、眠れないときに酒に頼ると答えた割合が一番多かったのは日本人だそうだ。リラックスするためにグラスを傾けるのはいいけれど、眠るために毎晩飲むようになると、耐性ができて酒量は増えていく。確かに飲酒で寝つきはよくなるが睡眠の質は落ちるそうだし、トイレが近くなり途中で目を覚ます原因にもなる。
●薬を飲むときは悩まないほうがいい。「飲むなら飲む」
薬を飲もうか飲むまいか悩んだ挙句、結局飲まずに布団に入り、やはり眠れず、だいぶ時間が経ってから飲んで、翌日にふらつきなどが残る、などということを何度も経験した私。薬を飲むときは迷ったり悩んだりせず(「決められた処方」が大前提)、布団に入る30分から1時間ぐらい前に飲んで、あとはのんびり眠気を待とう。薬を飲むことに不安を抱いたり悩んだりしていると、それが刺激となって眠りを遠ざけることにもなってしまうので。薬に関して気になることがあれば、遠慮せずに医師に聞いたほうがいい。
●快眠情報を忠実に守ろうとしない
今や快眠情報が花盛り。でもあまりこだわりすぎるとそれがストレスになることもある。
●眠りのハードルは低めで
睡眠は環境や年齢で変化するもの。他人の眠りやかつての自分のいい眠りを引き合いに出して悲観しないに限る。私のなかには、更年期に突入したとき、またまた不眠がぶり返すかもしれないといった不安もあるけれど、上手にやり過ごす方法を見つけようと思う。
振り返れば、私の不眠克服とは医師の助けを借りながら、眠りの理想への執着を取り除き、「自分らしい眠り」を獲得する過程だったとつくづく思う。一方で、不眠という「クセ」はしぶとく私のなかに居座っていることも事実だから、その都度、環境や生活に合った眠りを見つけ、同時にリラックス法も見直したりしながら、自分の眠りを探していこうと思っている。睡眠は自分の思い通りにならないものではあるが、多様性に富む工夫できるものだという「希望」もあるから。このサイトを訪問してくださった皆さん、そして不眠に悩む方々が快方に向かいますように、心から。おやすみなさい……とあなたへ。
[医療監修]
滋賀医科大学精神医学講座 教授 山田 尚登 先生















