睡眠トピックス

ドクターからのメッセージ

第8回 ヒトは寝て食べて出してはじめて活動できる動物

東京ベイ・浦安市川医療センター センター長
神山 潤 先生より

眠りはヒトという動物にとって大切な営み


神山 潤 先生

子どもの眠り、をテーマに話をさせていただきます。
私は小児科医ですからよく聞かれます。「子どもにとって眠りは大切ですよね?」と。そんな時私はいつも次のように答えます。
「そんなことはありませんよ。」と。お分かりになりますか?
「子どもにとって眠りは大切ですよね?」と聞かれた私は、「そんなことはない。」と答えるわけです。皆さんには私の答えの意味がお分かりになりますか?きっと多くの方は私が、「そうです、眠りは子どもにとって大切です。」と、答えることを期待していらしたかもしれませんね。
では、どうしてそのような期待をお持ちになったのでしょうか?

その原因として私は皆さんよくご存知の成長ホルモンを考えています。成長ホルモンは寝入ってすぐの深い眠りに一致して多量に分泌されます。‘寝る子は育つ’ということわざの根拠としてもよく知られています。
ただこのことが間違って伝わってしまったようです。

  • 寝ると成長ホルモンが出る。
  • 成長は子どもに大切。

だから、

  • 眠りは子どもに大切。

そして、ここからが問題なのですが、眠りはもう成長しない大人にとっては大切ではない、という誤解です。ところが成長ホルモンは新陳代謝を盛んにします。もちろん大人でも新陳代謝は大切ですし、大人も眠れば成長ホルモンが出ます。つまり私が申し上げたいのは、「眠りは子どもばかりではなく、ヒトという動物にとって大切な営み」ということなのです。

ヒトは寝て食べて出してはじめて活動できる動物

最近、日本の子どもたちの睡眠不足が指摘されています。小中学生が一番ほしい時間は睡眠時間で、その割合は全体の3分の2近い、という調査結果があります。日本の赤ちゃんの睡眠時間が世界で一番短い、という調査結果もあります。
一方で、日本の大人の睡眠時間の短さも世界トップクラスです。つまり日本では大人が眠りを疎かにしているのです。大人が眠りを疎かにしている国では、子どもの眠りについても、大切にされません。
眠りは子どもの仕事とばかりに、子どもには寝ろと言う一方で、大人が夜ふかしをしているのが日本です。夜ふかしをする大人を見ていれば、子どもたちはいつか夜ふかしをしてやろうと虎視眈々とチャンスを伺うばかりです。また夜スペとか称して中学生を21時半過ぎまで拘束するに及んでは、中学生時代から残業を勧めているようなものです。
ヒトは寝て食べて出してはじめて活動できる動物です。寝ないで活動の質が高まるわけがありません。それなのにどうして忙しくなると皆さん「寝る暇を惜しんで仕事をしなければ・・・」などと言ってしまうのでしょうか?寝ないでまともな仕事ができるわけがないではないですか。

よく眠るための基本

ヒトという動物は、朝日を浴びて、昼間光を浴びて活動し、夜は暗い所で過ごし、規則的な食事をとるときに潜在能力が最も効率よく発揮されるという、気合と根性ではどうにも変えようのない脳の仕組みを持っているのです。そして、この4点がよく眠るための基本、すなわち睡眠衛生の基本です。
夜になっても眠れない、あるいは昼間から眠い、という方はまずこの睡眠衛生の基本をしっかりと確認していただきたいと思います。
不適切な睡眠衛生を続けている限り、夜になっても眠れない、あるいは昼間から眠い、という悩みの根本的な解決は難しいと思います。

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