災害時、高齢者の中には、避難所などで夜間に起き上がったり、大きな声を出したり、といった不穏な状態となる人がいて、周囲の人を驚かせることがあります。
このような状態は「せん妄」といい、強いストレスや環境の変化から突然発生する意識の混乱、強い不眠を伴う一時的な脳の機能障害です。
平常時にも、体力が落ちた状態で、昼夜の差がわかりにくい環境にいる入院患者さんや高齢者でみられることがあります1)。
災害時には、特に高齢者に「せん妄」があらわれやすく、不眠症や認知症と誤診されてしまうことがあります2)。
自分では気づくことが難しいため、周囲の人が「せん妄」に気づき、支援をする必要があります。
治療を開始することで、「せん妄」は数週間ほどで症状の消失・回復が期待できます。
せん妄と認知症の違い1)
せん妄 | 認知症 | |
---|---|---|
発症 | 急に | 徐々に |
原因 | 脱水、感染症、強いストレス・環境変化 | 脳の病気 |
症状 | 注意力低下(不眠や無気力が目立つときもある) | 記憶力低下 |
睡眠覚醒リズム | 昼夜逆転(夜間に徘徊、興奮して大声を出す) | 断片的 |
経過 | 一次的(数日~数週間) | 永続性 |
治療の必要性 治療の効果 |
すぐに治療を開始する 回復する |
緊急性は低い 進行を遅らせるのみ |
- 1)睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会 内山真 編. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版. じほう 2019 p. 187-9
- 2)厚生労働省「東北地方太平洋沖地震に関連した不眠・睡眠問題への対処について」
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/0311/index.html)2024年9月