東日本大震災では、震源地から離れた東京や大阪でも、不眠症の有病率が増加しました(災害前に比べて東京は2倍、大阪は1.6倍の有病率、多変量解析)1)。
原因として、テレビやインターネットによる被災地や放射能汚染の映像などから、離れていても次に被災するかもしれないという不安や、電力・資源の供給不足といった社会的不安が喚起されたこと、共感疲労†などの影響が考えられています2)。
†共感疲労とは、他者が経験した災害などの苦難に対して共感し、自分自身のこころが疲労してしまう状態。
災害報道は、復興に向けた建設的な役割を担う一方で、間接的な心的ストレスももたらします。
報道は目的をもって主体的に視聴すること、休憩を挟むなどしてダラダラとした長時間の視聴を避けることなどが推奨されています3)。
【災害報道で推奨される視聴方法】3)
- 地元の災害についての最新情報を見る
- 無意識/習慣的に災害報道を視聴しない
- 過去の映像や繰り返しの報道は避ける
- 子どもや青少年が不用意に報道を視聴しないよう制御する
- 1)Sugiura H et al. Interact J Med Res. 2013: 2(1): e2
- 2)中林孝夫・栗山健一. 精神医学. 2017: 59(6): 559-65
- 3)ウルサノ RJ 他編. 災害精神医学ハンドブック. 誠信書房 2022. 第7章 p. 193-213