
分割睡眠は、動物の多くでみられる睡眠パターンです1)。
1日の間に短い睡眠を複数回とる分割睡眠は、多相睡眠とも呼ばれ、新生児にもみられます。
単相睡眠をしている現代人(大人)も、光周期(1日のうち光にさらされている時間)を、現代人に平均的な16時間から自然光のみの生活に近い10時間に短くした実験を行うと、睡眠が二相に変化したと報告されています2)。
かつて、人工の光がなかった時代には、人間(大人)も二相(夜中に起きる)の分割睡眠を行っていたようです。
分割睡眠の研究では、夜間の睡眠時間の長短にかかわらず、昼間に睡眠をとり、1日あたりの総就床時間を維持するほど、眠気を感じにくく、注意力が持続することがわかっています3)。
なお、一部の人が「多相睡眠により睡眠の質が高まり、総睡眠時間も短縮できる」と主張していますが、いずれも裏付けとなる証拠はなく、むしろ心身への悪影響が懸念されています。そのため、1日あたりの総睡眠時間を大幅に減らしたり、1日の間に睡眠を複数回に分割したりするような睡眠パターンは推奨されていません4)。
緊急時一時的な分割睡眠は許容されるものの3)、平常時は睡眠を短時間の仮眠で補う程度がよいと考えられています5, 6)。
「睡眠サイクル_コラム_昼寝にはコツがある!?」もご参照ください。
単相・分割(二相)睡眠の例注)
注) 睡眠パターンは個人差が大きく、適した睡眠パターンは人それぞれです。
睡眠不足が習慣化すると、作業効率の低下や眠気に気づきにくくなる人もいます7)。
Mollicone DJ et al. Acta Astronaut. 2008: 63(7-10): 833-40
Weaver MD et al. Sleep Health. 2021: 7(3): 293-302 を参考に作図
- 1)Capellini I et al. Funct Ecol. 2008: 22(5): 847-53
- 2)Wehr TA. J Sleep Res. 1992: 1(2): 103-7
- 3)Mollicone DJ et al. Acta Astronaut. 2008: 63(7-10): 833-40
- 4)Weaver MD et al. Sleep Health. 2021: 7(3): 293-302
- 5)Liu X et al. Med Sci Monit. 2015: 21: 1269-75
- 6)Yamada T et al. Sleep. 2015: 38(12):1945-53
- 7)Van Dongen HPA et al. Sleep. 2003: 26(2): 117-26
- 【参考】日本睡眠学会 編. 睡眠学 第2版. 朝倉書店 2020 p.331