
乳幼児をもつ親は、夜間の授乳や夜泣きなどで睡眠が小間切れになります。
特に睡眠不足や睡眠中断の多さは、産後うつにつながることがあります1)。
育児による夜間の睡眠中断は、男性の0.11%が、女性の1.47%が経験しており、育児による睡眠中断は女性に生じやすいという結果でした(カイ二乗検定、p<0.001)。比率から計算すると、女性は男性より13倍、育児による睡眠中断を経験しやすいことがわかりました2)。
特に、世帯の一番幼い子が0歳のときに男女差が最も大きく、一番幼い子が1~2歳まで男女差は続いたと報告されています(ロジスティック回帰分析、ともにp<0.001)。
母親は父親よりも、子どもの泣き声や呼びかけに気づきやすいことが要因のひとつですが、これは生物学的な違いではなく、家族のニーズを予測したり、見守ったりする、より認知的な家事を、普段から女性が担っているためと考えられています3)。
認知的な家事は、負担が大きいにもかかわらず、その多くが目に見えないことから、夫婦間の対立の原因ともなっています3)。
一方で、産後1年間の産後うつ傾向は、男性11.0%、女性10.8%と、男女で同じくらいであるという報告もあります4)。
子育て期の親の睡眠については、健診などで医師や保健師に相談したり、母子健康手帳の睡眠についての問診項目などを利用したりもできます。
また、家族等から十分な家事、育児などの支援が得られないときは、出産後1年以内の母子を対象にした「産後ケア事業」もあります。詳しくは、お近くの市区町村に確認してみましょう。
- 1)
- 渡辺綾子 他. 心理学研究. 2018: 89(2): 130-8
- 2)
- 柳下実. ソシオロジ. 2022: 66(3): 3-19
- 3)
- Daminger A. ASA. 2019: 84(4): 609-33
- 4)
- Takehara K et al. Scientific Reports. 2020: 10: 13770
- 【参考】
- 厚生労働省 「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 p. 38-41