睡眠トピックス

ドクターからのメッセージ

第6回 不眠とメタボリックシンドローム

東京慈恵会医科大学附属青戸病院 院長
東京慈恵会医科大学精神医学講座 教授
伊藤 洋 先生より

眠れなくて困っている人は多い?


伊藤 洋 先生

最近の疫学調査では日本ではだいたい5人に1人がなんらかの不眠の症状に悩んでいるということがわかっています。不眠の症状というと寝つきが悪い、あるいは寝た感じがしない、途中で目が覚めてしまう、あるいは朝早く目が覚めてしまうという症状に加えて、眠れないことによって日中の作業能力が低下する、気分が沈む、イライラするなどのなんらかの精神症状、あるいは運動機能に障害がある場合に不眠症と定義されます。

メタボリックシンドロームについて

2008年の4月にメタボリックシンドロームに着目した健診が始まりました。
ウエスト周囲径が男性では85㎝以上、女性では90㎝以上、かつ脂質異常、高血圧、高血糖のいずれか2つ以上当てはまる場合にメタボリックシンドロームと定義されています。

日本のメタボリックシンドロームの診断基準
内臓脂肪の蓄積
ウエスト周囲径 男性≧85㎝ 女性≧90㎝
(男女ともに、腹部CT検査の内臓脂肪面積≧100㎠に相当)
上記に加え以下のうちの2項目以上
脂質異常 中性脂肪≧150mg/dL、HDLコレステロール<40mg/dLのいずれかまたは両方
高血圧 収縮期血圧≧130mmHg、拡張期血圧≧85mmHgのいずれかまたは両方
高血糖 空腹時血糖値≧110mg/dL

不眠とメタボリックシンドロームに関連はある?

従来、身体の病気と不眠、睡眠障害はあまり関係がないと考えられていましたが、最近のアメリカを中心とした研究によって、この2つには大きな関係があると言われています。
例えば糖尿病では、20~30%の頻度で睡眠障害が認められることがわかっていますし、逆に睡眠障害が高血圧や糖尿病に悪い影響を与えるということもわかっています。

メタボリックシンドローム対策としての不眠治療の可能性は?

多くの研究がありますが、1つはっきりしていることは、眠れない人、不眠の症状がある人は、将来糖尿病や高血圧になる確率が不眠の症状がない人に比べてかなり高いということです。これには様々なデータがありますが、だいたい3~4倍高いという結果になっています。また、不眠の症状を治すことによって糖尿病そのものが改善する傾向にあるというデータもあります。

従来の治療でなかなかよくならない高血圧症には、睡眠障害の中でも睡眠時無呼吸症候群といった病気が隠れている場合があり、その睡眠時無呼吸症候群を治療することで高血圧症もよくなるということがわかっています。
同様に、眠れないと交感神経系が高まって、糖尿病や高血圧症が悪化するということもわかっています。この様な身体の病気の治療に際して、睡眠障害の有無に十分注意をして治療することが身体の病気自体を良くすることにつながるといえます。

今までお話ししたように、睡眠障害とメタボリックシンドロームというこの2つの病気の間には非常に密接な関係があるわけです。ですから、メタボリックシンドロームを治療する際には、規則正しい時間に寝て日中の活動性を保つということが重要だと考えます。
もしも不眠がある場合には処方された適切な睡眠薬を服用し、不眠を治療することが、メタボリックシンドロームの治療にも有益となります。

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