
現代社会で人は、太陽による自然の光だけでなく、照明や電子機器による人工の光にもさらされています。
就寝前に、強い光(2,500ルクス程度)を受けると、深部体温の低下やメラトニン分泌が抑制され、入眠に悪影響を及ぼすことがわかっています1, 2)。
また、青色光を増やしたLEDバックライトや青色光の割合が多いテレビ画面では、メラトニン分泌に影響を及ぼす可能性が指摘されています3, 4)。
一方、スマートフォンなどの小型電子機器については、画面の明るさを最大にするなどの極端な使用条件下ではメラトニン分泌が抑制されましたが5) 、通常の使用の範囲では画面からの光の影響は認められませんでした6)。
電子機器の光が睡眠に及ぼす影響については、画面の明るさだけではなく、画面の大きさや目からの距離が関係してくることもあり、はっきりした結論は出ていません。最近は、光よりも、ゲームなどの行為による覚醒の影響が強いのではないかと考えられています7)。
【参考】照度と明るさの目安8)
照度(ルクス) | 環境 |
---|---|
100,000 | 晴天昼の太陽光 |
32,000 | 曇り昼の太陽光 |
2,000 | 曇り日の出1時間後の太陽光 |
500~700 | 百貨店など |
400~500 | オフィス |
300 | 一般住宅 |
100 | 街灯 |
10 | ロウソク(20cm) |
1 | 月明り |
- 1)Dijk DJ et al. Neurosci Lett. 1991: 121(1-2): 59-62
- 2)Bunnel DE et al. J Sleep Res. 1992: 1(1): 17-23
- 3)Cajochen C et al. J Appl Psysiol. 2011: 110(5): 1432-8
- 4)Komada Y et al. Sleep Biol Rhythms. 2015: 13(4): 316-22
- 5)Chang AM et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2015: 112(4): 1232-7
- 6)Heath M et al. Chronobiol Int. 2014: 31(4): 496-505
- 7)日本睡眠学会 編. 睡眠学 第2版. 朝倉書店 2020 p.405-10
- 8)大阪市立科学館学芸課 編. こよみハンドブック 2022.4~2024.4. 大阪市立科学館 2022. p.66