脳は日中に学習した情報を、睡眠中に再活性化し、記憶の整理(定着・消去)を行っていると考えられています1)。
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レム睡眠中に出る脳波であるシータ波は、脳の海馬と呼ばれる部位で記憶の形成に重要な役割を担っていると考えられています。レム睡眠だけを取らないようにすると、記憶の定着が難しくなったと報告されています2)。
また、レム睡眠中には、海馬において記憶の忘却も行われているという報告もあります3)。 -
深いノンレム睡眠中に出る脳波であるデルタ波を電気的に増強すると、記憶の固定化も増強されることがわかっています4, 5)。
また、ノンレム睡眠中のデルタ波と低振動波(デルタ波より遅い周波数の波:0.2~1Hz)は、それぞれ記憶の弱体化と統合を促すという報告もあります6)。
最近の研究では、睡眠不足であっても、記憶の定着に重要な脳の神経回路部分に電気刺激を与えることで記憶力が上がることがわかってきており7)、記憶障害の治療法開発が期待されています。
周波数帯域(Hz) | 名称 | 検出時の状態 |
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θ 波 | レム睡眠 | |
δ 波 | ノンレム睡眠 | |
低振動波 | ノンレム睡眠 |
- 1)日本睡眠学会 編. 睡眠学 第2版. 朝倉書店2020 p.218-26
- 2)Boyce R et al. Science. 2016: 352(6287): 812-6
- 3)Izawa S et al. Science. 2019: 365(6459): 1308-13
- 4)Chauvette S et al. Neuron. 2012: 75(6): 1105-13
- 5)Marshall L et al. Nature. 2006: 444(7119): 610-3
- 6)Kim J et al. Cell. 2019: 179(2): 514-26
- 7)Miyamoto D et al. Science. 2016: 352(6291): 1315-8