運動と睡眠の研究から「運動するとよく眠れる」ではなく、「定期的に運動する人はよく眠れている」と考えられます。ただし、運動をする時間帯と運動の程度(強度)は、眠りに影響することがわかっています。
2013年米国睡眠財団は、睡眠と運動時間帯、運動強度の関係を調査しました1) 。下表は、運動時間帯と程度別に、運動していない人を1として、運動時間と運動強度の違いにより、睡眠の質が良いと思う人の割合を示しています。
運動時間帯と運動強度の睡眠への影響(米国睡眠財団)1)
運動時間帯 | 運動の程度 | 睡眠の質が良い | 最適な睡眠時間を 確保(7~8.5時間) |
目覚めが すっきりしない |
---|---|---|---|---|
朝運動者 (就寝の8時間以上 前の時間帯に運動) |
激しい | 1.88(p<0.001) | 1.19 | 0.56(p<0.01) |
適度 | 1.53(p<0.05) | 1.35 | 0.82 | |
軽い | 1.66 | 1.52 | 0.55(p<0.05) | |
夜運動者 (就寝4時間前から 就寝までに運動) |
激しい | 1.06 | 1.05 | 0.94 |
適度 | 1.13 | 1.36 | 0.79 | |
軽い | 1.41 | 1.77(p<0.05) | 0.84 |
米国成人1000人(23~60歳)を対象にした電話取材とインターネットによる調査結果(海外データ)
運動強度は国際身体活動アンケート修正版を使用、非運動者を1とするオッズ比をロジスティック回帰分析を用いて求めた。
研究の限界:横断的研究であり結論(相関関係)を出すには不十分、自己申告のためバイアスがかかっている可能性があるなど。
朝に運動をする人は、睡眠の質が良く、すっきりと目覚める可能性が最も高いという結果でした。睡眠の質を考えると、朝が定期的な運動に最適な時間と考えられます。また、就寝まで近い時間帯(4時間未満)であっても、良質な睡眠のためには、運動しないよりも運動、特に軽い運動をした方がよいと考えられます 1)。
- 1)Buman MP et al. Sleep Med. 2014: 15(7): 755-61
- 【参考】日本睡眠学会 編. 睡眠学 第2版. 朝倉書店 2020 p.342-6