睡眠トピックス

ドクターからのメッセージ

第12回 日中の眠気の原因は睡眠時無呼吸症候群!

虎の門病院 睡眠呼吸器科 部長
成井 浩司 先生より

睡眠時無呼吸症候群の病態、好発年齢・性別、患者さんのタイプと発症の原因やメカニズム


成井 浩司 先生

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まり、そのことで体の中に酸素が供給されず、深く眠れず、熟睡できないような病気です。呼吸が止まり、そのあと呼吸が再開するときに大きないびきをかく、苦しそうな不規則な呼吸をする、苦しくて何度も目が覚める、夜トイレに何度も起きる、子供に至っては夜尿症の原因になるとも言われています。このようなことが一晩中繰り返されるわけですので、多くの方はよく眠れていません。したがって、昼間眠くなるという症状が生じてきます。

睡眠時無呼吸症候群は、体重の増加・加齢とともに病状は悪化してきます。無呼吸症の多くの方は40~60歳くらいの肥満の方に多くみられます。体型的には太った男性、首の短いような男性、舌の大きいような方が無呼吸症になりやすくなります。それと同時に睡眠中に上を向いて寝るということ、アルコールを飲むということ、あとは顎が小さいというようなこと、こういうようなことが睡眠時無呼吸症候群の原因となってまいります。

~睡眠時無呼吸症候群の多くの方にみられる特徴~
  • 太っている、首が短い、舌が大きい、顎が小さい(体型面)
  • 睡眠中、上を向いている
  • アルコールを飲む

睡眠時無呼吸症候群は、太った男性だけの病気ではありません。実際、50歳を過ぎると女性の方にも無呼吸症の症状が出てまいりますし、50歳を過ぎると無呼吸症の男女比は同等と言われています。しかしながら、虎の門病院を含めた睡眠を専門としている医療機関には男女の比率は8:1くらいの割合で外来に患者さんがお見えになっています。したがって、女性の方が無呼吸症として診断・治療がなされていないのが現状です。日本人を含め、アジアの人たちは顎が小さい、下顎が後退しているというような顔面骨の特徴をもち、欧米人に比べてみて同じような体重でも無呼吸症の有病率が高いと言われています。したがって、これから日本の社会に増えてくる病気になると思います。

睡眠時無呼吸症候群の合併症やリスク

睡眠時無呼吸症候群の合併症には、高血圧、不整脈、狭心症、心筋梗塞、脳血管疾患、心不全、糖尿病等があります。睡眠時無呼吸症候群は、肥満を合併していることが多く、また、睡眠時無呼吸症候群自体でも動脈硬化を悪化させますので、狭心症、心筋梗塞を発症してくるリスクが非常に高いと言われています。

また、昼間の眠気から交通事故、労働災害を併発し、そのリスクは無呼吸がない方に比べて7倍とも言われています。全般的な生活の質にも影響し、経済的な損失は計り知れないものがございます。

睡眠時無呼吸症候群と診断された患者さんの具体的な治療法

睡眠時無呼吸症候群の治療は、患者さん患者さんに合わせて治療を選択していきますが、顎が小さかったり、中等症程度の無呼吸症の方にはマウスピースが非常に有効です。さらに、CPAPという治療に関しては、鼻にマスクを使って、気道に陽圧をかけて、気道が塞がっているところを広げる治療方法です。現在日本では、CPAPを使っている方は25万人いると言われています。CPAPの治療を行うことにより、いびき・無呼吸が消失し、睡眠の質が改善し、熟眠できるようになります。もちろん、いびきをかかなくなりますので、ベッドパートナーも快眠できるようになります。

昼間の眠気も改善し、昼間の活動性も増加し、記憶力・集中力も改善してきます。夜間頻尿や高血圧も改善し、合併症を予防することもできます。さらに、CPAPを継続することにより、健康となり若々しく生きることができます。

CPAP療法を行っても眠気が残る場合その対策
治療が良好に継続されていて、日中の眠気が残る患者さんの割合

睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療は、5時間以上毎日使うことが理想的ですが、良好に使用できない場合もあります。使用できないような理由としては、CPAPの治療圧が適切に処方されていない、マスクや口から空気が漏れている、無呼吸以外の睡眠障害を合併しているというようなことが考えられます。

CPAP治療が良好に行われていても、昼間の眠気を感じている方がいらっしゃいます。このような方は、内臓脂肪、肥満に伴う関係や長期間低酸素が続いたということで脳への影響が考えられます。CPAP使用後も眠気が残っているような方の場合、CPAPの使用状況を再度確認したり、睡眠時無呼吸症候群以外の眠気をきたす病気が合併しているかどうかを確認したりすることが必要です。このような精査をした上でも、眠気が残るような場合、昼間の眠気を改善させるようなお薬もございます。そのような方は、今おかかりの先生に相談したり、睡眠学会認定医療機関を受診することをおすすめいたします。

患者さんへのメッセージ

現在日本には、睡眠時無呼吸症候群の方は、潜在患者さんも含めると500万人以上いると考えられています。睡眠時無呼吸症候群の発症には、加齢や生活習慣の変化が関与していると言われています。今後日本にも睡眠時無呼吸症候群の患者さんはさらに増えていくと思います。

私どもは患者さんとともに生活習慣改善に取り組み、合併する生活習慣病の治療を行い、睡眠時無呼吸症候群に対するマウスピース治療、CPAP治療などを継続していきたいと思います。睡眠時無呼吸症候群に対する治療は、日々進歩しています。無呼吸症はいびきをかいて呼吸が止まり、眠くなるだけの病気ではありません。多くの合併症を併発してまいります。

将来発症する病気を予防し、より快適な、そして健康的な生活を送るためにも、私ども専門医をご受診ください。お待ちしております。

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